GBSの感染予防対策について

妊婦健診で、「B群溶連菌が陽性なので、予防注射の皮内反応をしましょう。」と言われてびっくりした方も多いことでしょう。B群溶血連鎖球菌(略称:GBS)は決して特殊なものでも稀なものでもありません。日本の妊婦さんの約2割前後は、膣前庭付近(産道の出口付近)に保菌しています。しかし、予防対策が確立されていますので、ご安心ください。
B群溶血連鎖球菌(略称:GBS)は、新生児期の細菌感染症の原因としてもっとも多いとされています。生後5日以内に発症する早発型とそれ以後に発症する遅発型があります。早発型は発症が急激で進行も早く、致命率、後遺症発症率ともに高く危険です。早発型の感染経路は母児間の垂直感染(産道感染)によると考えられています。

<当クリニックの対策>

米国CDC2002の勧告に従って、運用しています。
<検査法と検査時期>
検査法は、膣分泌物鏡検(おりもの検査)および一般細菌培養同定検査(培養検査)です。
妊娠初期(8〜11週ころ)と妊娠後半期(妊娠30週ころ)には、全例検査します。
妊娠中に、膣炎等の既往のある方は、36週でも検査します。

<予防対象>
1 上記の検査にて、1回でもGBS陽性となった妊婦さんを対象とします。
2 前児が重症のGBS感染症を発症した妊婦さんは、今回の妊娠中がGBS陰性であっても、予防対象とします。
3 検査結果が不明の方で、37週未満の早産、破水後18時間以上、38度以上の発熱のいずれかを認める場合も対象とします。

<予防法>
抗生剤を分娩中に(1時間以内に出生が予想されそうな時期帯)、ABPC(アンピシリン)2gを産婦さんに点滴します。20分程度で終わります。すぐに生まれなかった場合は、追加することもあります。
赤ちゃんのほうは、耳朶培養(耳の中の培養)を採取します。なんらかの感染の疑いがある場合は、感染症のチェック(血液検査)をします。さらに必要があれば赤ちゃんに抗生剤を投与することもあります。 
上記のような予防対策を採るようになってから、GBS感染症の赤ちゃんは劇的に減少しました。 
よって、GBS陽性と言われても予防対策がありますので、ご安心ください。

平成20年(2008)1月29日:記