母子同室に成功するコツとは

私どもは、母子同室をお勧めしています。

しかし、バースプランによく「お産後は赤ちゃんを新生児室に預かって欲しい。」とか、「昼は母子同室で頑張りますが、夜は預かって欲しい」というようにお書きになる妊婦さんが多くいらっしゃいます。お気持ちはわかるのですが、おかあさんと赤ちゃんとの関係を良く考えて見ましょう。

妊娠中は、文字どおり赤ちゃんはおかあさんと一心同体です。お母さんの食事はもちろんのこと、呼吸や心境、喜怒哀楽、すべてがおなかの赤ちゃんに直に伝わります。

生まれても、母子はほぼ一心同体状態です。カンガルーケアといってすぐに素肌と素肌で抱き合うことをお勧めしていますし、タッチケアといって母子の触れ合いを推奨しています。赤ちゃんはお母さんの顔が見たいのです。声が聞きたいのです。触ってほしいのです。そして、おっぱいが飲みたいのです。妊娠中の食事はおなかの赤ちゃんの栄養状態に直結しますからとても重要ですが、お産後も同じです。母乳栄養がよいのはもちろんですが、もし仮におかあさんが偏った栄養不足の食事をしていると母乳は悪い内容になってしまいます。たとえば、甘いものばかり食べていると、母乳が不要に甘ったるくなり、赤ちゃんの栄養状態に問題が生じます。生まれても母子の一心同体状態はまだまだ続くのです。

母子同室のメリットは多々あります。親子の心身相関に好影響があることはもちろんですし、赤ちゃんの感染症が少なくなり、母乳が良く出る等も大切なメリットです。

ただどうしても慣れないうちは、母子同室は疲れそうと思いがちなのも理解できます。しかし、母子別室にして授乳のたびに起こしてもらって授乳室へ行くほうが疲れるというおかあさんも実はけっこういらっしゃるのです。

では、ポイントは何かといいますと、ずばり「赤ちゃんの泣き声」なのです。

慣れないおかあさんは赤ちゃんが泣くたびに、「どうしたんだろう。母乳が足りないのかな。何か具合が悪いのかな。・・・」といろいろ考えて心配してしまうのです。しかし、赤ちゃんの泣く理由の第一は、単純な甘えであることが最近の研究でわかっています。お母さんの顔が見たいとか、相手をしてほしいとか、何もないけどとりあえず泣いてみたいとか、そんな感じなのです。おなかがすいて泣くのは、泣いた回数の3分の1以下と言われています。ですから、赤ちゃんが泣くからといっていちいち相手をしなくてもよいということです。何時間もほっておくことは問題ですが、数分で自然と泣きやむこともよくあります。深夜などは、泣かせると家族に悪いとか、入院中は隣の部屋の方に悪いとか気にしてしまいますが、生まれたての赤ちゃんの泣き声などかわいいものです。お母さんが心配するほどには迷惑でないものです。すこし、ずうずうしいくらいに考えてかまいません。これが、母子同室を成功させる意外なコツなのです。ご参考にしてください。

平成19年5月5日 記