安らかな良いお産のためには

当クリニックの基本理念は、「安らかな良いお産と女性のためのプライマリーケアー」です。では、安らかな良いお産とはどのようなお産であり、その実現のためには、どんなことが大切なのかということを改めて考えてみました。
まず、考え方として大切なことは、妊娠していることがうれしいと思えることです。(妊娠の肯定) そして、おなかの赤ちゃんがいとおしく思えて(胎児の肯定)、分娩が楽しみで早くわが子に会いたいと思っている。(出産の肯定) さらには、わが子の成長していく姿を思い描いていて(成長の希望)、家族の幸せな将来像が描かれている(家族の肯定)、 ということです。 つまり、徹底的にポジティブでプラス思考のマタニティライフを過ごすということです。
 知識として大切なことは、妊娠出産のメカニズムをある程度理解していること、授乳や育児について興味を持って勉強していること、自然分娩主義の考え方を理解していることなどです。これらの知識は、母子手帳や当クリニックのオリジナルテキストなどで十分に理解できます。(当クリニックの分娩方針は、テキストやこの文章を読んでいただくことで理解できると思います。)
 技術的なことで大切なことは、安産体質になるように自己変革していくことです。そのためには、まずなによりも、健康的な日ごろの生活・充実した食生活が基本です。そして、妊婦健診をきちんと受けることは勿論ですし、各種のサークルへ積極的に参加するなどして、リラックス法・呼吸法の習得に努めることです。具体的には、マタニティヨーガと胎教レッスンを特に推奨しています。
 いざ、お産が始まったら、自分自身の体の変化を自己観察してみましょう。できれば、陣痛を客観的に観察してみようと思ってみてください。心音検査の時には、胎児心音に耳を傾けてみましょう。赤ちゃんが話しかけているようにも感じられるかもしれません。おなかの赤ちゃんに心の中で話しかけてみましょう。勿論、声に出して話しかけたほうがもっと良いでしょう。夫や家族との会話も大切です。手を握ったり、腰をさすってもらうのも会話のひとつです。クリニックのスタッフとの信頼関係もとても大切です。分娩経過中の、医師・助産師・看護師の説明や励ましなどに耳を傾けましょう。
 無事に分娩が終了したら、分娩した自分自身をまず誉めてあげることです。自分自身にねぎらいの言葉をかけてあげましょう。そして、夫や家族への感謝の気持ちを言葉に出しましょう。(自己肯定と感謝)私たちスタッフもきっといっぱいお誉めすることでしょう。
 そして、育児はまず授乳からスタートしますが、決して満点を目指そうとせず、60点で良しとする心のゆとりを持ちましょう。初めから上手な方はいませんから、最初は下手で当たり前と思って、赤ちゃんの表情を良く見て話しかけながら授乳してください。自分自身とわが子の明るい未来をイメージしてみることです。以上のような事柄を大切に考えてお産の準備をすすめていただければ、「安らかな良いお産」の達成は間違いないでしょう。たとえ吸引分娩であっても、帝王切開であっても、「安らかな良いお産」は実現可能なのです。すなわち、「安らかな良いお産」とは単なる正常分娩のことではなく、安らぎと祝福と幸福感に満たされた「まごころのお産」のことだと言えると思います。

平成17年 9月22日 記